緑泥石 chlorite (Mg,Fe,Al)6(Al,Si)4O10(OH)8  [戻る

単斜晶系 二軸性(−,+)2Vx=20°〜2Vz=60°  α=1.57〜1.67,β≒γ=1.57〜1.69,γ-α=0〜0.01
※干渉色は低い。ただし,時に暗褐色や藍色の異常干渉色を示すため,一見,干渉色が高く見え,観察には要注意の場合がある。
※Fe3+を多く含み,OH→Oの置換が進んだものは褐色で酸化緑泥石といい,干渉色が高く2〜3次に達し,黒雲母と区別しにくい。

色・多色性/無〜淡緑色の多色性あり(X´=無色,Z´=淡緑色)。Feの多いものは濃色で明瞭な多色性を示し,角閃石類と紛らわしいが,平行ニコルでは屈折率が低いため滑らかに見え,クロスニコルでは干渉色が低く,直消光である。
なお,酸化緑泥石は褐色で多色性が強く,干渉色が高く黒雲母と区別困難。

形態/板状の形態でそれの断面が1方向に伸びたように見えることが多く,伸び方向にへき開が発達する。板状結晶が扇状に集合していることも多い。
へき開/1方向(板状の面)にきわめて完全。
消光角/へき開・伸び方向に対し直消光。
伸長/正または負。

双晶/偏光顕微鏡では認めらない。

累帯構造/見られない。時にFe⇔Mg⇔Alの部分的置換による累帯構造があるが,偏光顕微鏡下では認められない。

産状

火成岩にはマグマから固結した初生鉱物としては認められず,変質鉱物としてアクチノ閃石・緑簾石・ぶどう石などと一緒に含まれ,有色鉱物などの変質部に細粒集合体をなすほか,時に岩石全体を貫く細脈状をなす。特に付加体の海洋玄武岩や変はんれい岩などに変質鉱物として多く見られる。

・変成岩では,低温の苦鉄質岩起源の結晶片岩(特に緑色片岩)に多く含まれ,アクチノ閃石・緑れん石・白雲母・石英・斜長石(曹長石)などと共生する。なお,超苦鉄質岩(蛇紋岩)と結晶片岩の境では変成作用の過程で両者の反応生成物として滑石・アクチノ閃石などと共に粗大な葉片状をなして産する。

・蛇紋岩地域では数%のニッケルを含む鮮緑色のものが産し,蛇紋岩の割れ目にフィルム状をなすほか,蛇紋岩中に産する塊状のひすい輝石岩のロジン岩化による変質鉱物として翠緑色の鱗片状〜微粒集合体をなし,翠緑色のひすいの着色原因となっている。これには著量のぶどう石やペクトライトなどを伴い,それらもひすい輝石岩のロジン岩化による交代鉱物である。
また,蛇紋岩が変成作用でかんらん岩になった変成起源のかんらん岩には数%のCr2O3を含み紫がかった緑泥石が見られ(菫泥石と呼ばれる),しばしば多量のクロムスピネルを伴う。



花こう岩中の黒雲母が変質してできた緑泥石
Chl:緑泥石,Bt:黒雲母,Pl:斜長石,Qz:石英,Af:アルカリ長石

深成岩の黒雲母は自家変質作用で周囲やへき開に沿い,緑色の緑泥石になっていることもある。クロスニコルでは黒雲母は干渉色が3〜4次に達し,虹色に見えるが,緑泥石の干渉色は1次の灰色程度だが,このように暗褐色の異常干渉色を示すことが少なくない。


結晶片岩中の緑泥石
Chl:緑泥石,Ac:アクチノ閃石,Qz+Pl:石英+曹長石,Ep:緑れん石

緑泥石+アクチノ閃石+緑れん石+石英+曹長石の典型的な緑色片岩の鉱物組合せ。緑泥石はアクチノ閃石に似るが,少し屈折率が低く,クロスニコルでは干渉色はかなり低く1次の灰〜白で,このように暗褐色の異常干渉色を示す(アクチノ閃石は干渉色が高くオレンジや青色などに見えている)。緑れん石は青味がなく黄味がかり,屈折率がかなり高く,干渉色も高い。



アクチノ閃石や緑泥石などを多く含む緑色片岩



ひすい輝石岩中の緑泥石 (平行ニコル)
Chl:Niを含む緑泥石, Prh+Jd:ぶどう石+ひすい輝石

蛇紋岩中に産する塊状のひすい輝石岩はその生成後にロジン岩化作用を受け,そのひすい輝石はぶどう石やペクトライトなどのCa鉱物に交代されていることが少なくない。その部分には変質鉱物としてNiを含む翠緑色の緑泥石がわずかながら微細集合体でできており,宝石質の翠緑色のひすいの着色原因となっている。塊状のひすい輝石岩中で宝石質の翠緑色部分が蛇紋岩との境付近や破砕された部分に見られるのはこの理由による(ロジン岩化の際に,蛇紋岩由来のNiが,ひすい輝石岩中に染み込んでNiを含む翠緑色の緑泥石となったものである)。



宝石質の翠緑色部分を伴うひすい輝石岩
左側の偏光顕微鏡画像は上画像の翠緑色宝石質部分の薄片。ひすい輝石岩生成後のロジン岩化の際にNiを含む翠緑色の緑泥石の微粒子がぶどう石とともにひすい輝石を交代している。白色部はロジン岩化をあまり受けていないひすい輝石岩。